このページは、
「青色+事業所得」で65万円の控除を受けるより、
「白色+雑所得」で事業税を回避した方が得するんじゃねーの?
と疑問に思っている人向けのページです。
※白色=白色申告のこと
どういうこと?
「どういうこと?」という人向けに簡単に説明します。
まず前提として、次の表のように、
- 青色+事業所得
- 白色+雑所得
には、それぞれメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
青色 + 事業所得 | ・「65万円の控除」を適用できる | ・事業税を払う必要がある |
白色 + 雑所得 | ・事業税を払わなくても良い | ・「65万円の控除」を適用できない |
「このメリット・デメリットをうまく利用すれば節税できるんじゃね?」
ということを言いたいわけです。
例えば、事業Aで稼いだ「所得A」があるとします。
この「所得A」を、
- 青色申告で「事業所得」として申告する
→ 65万円の控除を受ける
- 白色申告で「雑所得」として申告する
→ 事業税を回避する
という風に、「所得A」を「雑所得」や「事業所得」として申告すると、事業税を払わなくて良くなったり、払わないといけなくなったりするわけです。
「この違いを利用すれば節税できるんでね?」と。
本当に得する?
「65万円控除の方が税金を安くできるんじゃねーの?」と思うかもだけど、所得が1,200万円レベルになってくると、
「青色の控除65万円によって得する金額」よりも、「事業税を払わないことによって得する金額」の方が大きくなりますい↓。
●青色の控除65万円によって得する金額(所得1,200万円での税率で計算)
所得税:65万円×33%≒21.5万円
住民税:65万円×10%≒6.5万円
合計:28万円
●事業税を払わないことによって得する金額
事業税=(1,200万円ー290万円)×5%≒45.5万円
「65万円控除で国保料も節税できるんじゃ?」と思うかもだけど、
所得1,200万円レベルだと、65万円控除したとしても上限金額から1円も下がらない。だから65万円控除しても節税できるのが「所得税」と「住民税」しかない。
また、「所得1,200万円と言わずに、所得800万円レベルでも、事業税を払わないことによって得する金額の方が大きいんじゃ?」と思うかもだけど、
事業税は次年度で「租税公課」として経費計上できるから、次年度分の節税額を考慮すると、所得1,200万円レベルにならないと逆に損する。
だから、所得1,200万円レベルになると、あえて「雑所得」を選択した方が税金を安くできるという話。
ちなみに、「青色+雑所得」という組み合わせは存在しない。
なぜなら、青色申告は、事業所得が0円以上な場合にしか使えないから。
所得が多いのに「雑所得」で申告すると 「事業所得だろ」と言われるんじゃ?
例えば、所得が1,000万円もある状態で「雑所得」として申告した場合、
「それは事業所得だろ!」と指摘されるじゃねーの?という疑問。
問い合わせをしている人がいたので引用します↓。
質問5)雑所得で申告して「事業所得」で申告しなさいと税務署から指導されることはありますか?
東京都の国税局)99%ありません。
大阪府の国税局)事業所得としての申告が認められない場合はあるが、雑所得で申告して事業所得にしなさいという指導が入ることはない。
というわけで、”ほぼ”ないらしい。
僕自身も、東京都の税務署(浅草)経由で「電話相談センター」に電話したんですが
「雑所得」として申告したものが「これ事業所得でしょ」と指摘されることはほぼない。
という回答でした。
つまり、「雑所得・事業所得にどちらにも言えることだけど、申告した所得区分が100%認められるわけじゃなく、もしかしたら否認される可能性もある」ということらしい。
あと、「結局は各税務署の裁量による所が大きい」みたいなことも言っていた。
雑所得だと事業税の対象外なのか?
次に疑問なのは、
本来「事業所得」として申告した方が良いであろう所得を、「雑所得」として申告した場合、その「雑所得」には個人事業税が課税されるのか?
という点。
「雑所得で申告したものの、雑所得が事業税の対象になってしまった!」ということになってしまったら、元も子もないので。
というわけで「雑所得 事業税」でググると、こんなページを見つけた↓。
(1)事業所得又は(及び)不動産所得
前年の1月1日から12月31日までの1年間の事業から生じた事業所得又は(及び)不動産所得で、事業の総収入金額から必要経費、青色申告特別控除額等を控除して計算します。所得税の確定申告書第1表及び青色申告決算書、収支内訳書の所得金額欄の金額が当該所得です。(ただし、雑所得が課税の対象となる場合もあります。)
このページによると、「雑所得が課税の対象となる場合もあります」と書いてある。
ぐぬぬ・・、一体どういう場合に対象になるんだよ!
もっと具体的に書けよ!
というわけで、国税庁に電話してみた。
以下、電話内容の概略。
▼僕
「雑所得」も個人事業税の対象になる場合があるみたいですが、それってどんな場合ですか?
▼税
事業税の対象となるような「雑所得」の場合です。
▼僕
・・・?
事業税の対象となるのは、「事業所得」と「不動産所得」だけじゃないんですか?
▼税
「事業所得」や「不動産所得」と言った所得区分は、国税庁の中でのルールみたいなものなので、私たち都税側としましては、あまり関係がないのです。
「290万円を超えていて事業税の対象となるような所得は、事業所得と不動産所得くらいしかないよね」ということで、この2つに絞っているわけですが、本来、事業税の対象となるかどうかを判断する基準は「事業税の対象となる所得かどうか」という点です。
▼僕
例えば、
・小売業としての所得が500万
・広告業としての所得が100万
という場合、本業は小売業なので「事業所得」は500万で、広告業としての所得は「雑所得」は100万となるけど、この場合、どちらも「事業税の対象となる所得」なので、500万+100万の計600万が事業税の対象となる。
・・みたいな話ですか?
▼税
そのとおりです。基本的には「事業所得」と「不動産所得」が個人事業税の対象だけど、事業税の対象となるような「雑所得」の場合も課税対象になりますよ、と。
▼僕
なるほど。
じゃあ逆に、「事業税の対象となる雑所得」だったとしても、個人事業税の対象とならないこともあったりするんですか?
▼税
断言は出来ませんが、基本的には、所得が290万円を超えていて、かつ、所得が極端に大きかったり、決算書に「変だな」という点が見つからない限りは、個人事業税の対象にはならないかと思います。
▼僕
所得が極端に大きいってどれくらいですか?
▼税
ハッキリは決まっていません。
▼僕
分かりました。ありがとうございました。
というわけで結論としては、
・雑所得も事業税の対象となりうる(でも確率は低い)
ってことらしい。
高所得者が雑所得での申告すると 税務署に目を付けられるかも
高所得者が「白色+雑所得」で申告すると、税務調査されるリスクが高くなってしまう。
例えば、所得が1,000万円もある人が、「白色+雑所得」として申告している場合、
- 「1,000万も稼いでやがるくせに、なんで白色で申告してやがるんだ?」
- 「脱税を隠すためか?」
- 「うーん怪しいな、税務調査すっか」
と税務署が思う可能性が高い。
義務化されたのは「白色+事業所得」な人だけであって、「白色+雑所得」な人は、いまだに記帳の義務はないので、「怪しまれるのは当然だよね」って話。
・記帳の義務がある:白色+事業所得
・記帳の義務がない:白色+雑所得
まとめ
・所得が1,200万円↑レベルになってくると、「青色+事業所得」より「白色+雑所得」にした方が税金を安くできるのは事実
・「個人事業主=本業」の場合は、「お前はそれで飯を食ってるんでしょ?じゃあ雑所得じゃなくて事業所得だろ」と言われてしまう可能性が高いし、「雑所得」として通ったとしても事業税の対象となってしまう可能性も高い。
・「本業=会社員など」で、「個人事業主=副業」の場合は、「個人事業主はあくまで副業だ!事業として本気でやっているわけじゃない!」という主張を貫けば、「白色+雑所得」で行ける可能性が高いが、そもそも「雑所得」として申告しても事業税の対象となってしまう可能性もそこそこ高い。
・高所得者が「白色+雑所得」で申告すると、税務署から怪しまれるかも。
総まとめ
「青色+事業所得」で65万円の控除を受けるより、
「白色+雑所得」で事業税を回避した方が得するんじゃねーの?
これ↑は事実だけど、リスクが高い。
おわり
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